吉野の四季/吉水神社の秋

霧が辺り一面に広がり、紅葉が始まる吉野山

昔から人々の憧れであった吉野山は、
尾根伝いに広がった霊域で、かつては百数十もの寺院・塔頭が軒を連ねていたという。
大塔宮護良親王が壮大な城塁を築いたという吉野山一帯は
修験道や南朝の歴史が色濃く刻まれている。

何万本もの桜の名所として、吉野の桜はつとに有名だが、
紅葉の始まる晩秋の吉野路を、桜の落ち葉を踏みしめながら南朝哀史に想いを馳せて、
あちこちの名所・旧跡を散策するのも風情がある。

霧が立ち込める秋色の上千本 金峯山寺蔵王堂


花にねてよしやよしのゝ吉水のまくらのもとに石はしる音

この歌を詠まれた後醍醐天皇をお祭りする吉水神社は、
元は役行者小角が創建した修験道の僧坊で「吉水院」と呼ばれていたという。
鎌倉時代の文治元年(1185)、源義経・弁慶主従らが追手から逃れ、この吉水院に身を隠したとも伝わる。
南北朝時代の延元元年(1336)には、宗信法印が西吉野賀名生の行宮から後醍醐天皇を迎え一時の行在所となった。
また、安土桃山時代の文禄三年(1594)二月の豊臣秀吉のいわゆる「太閤花見」では、その本陣に当てられた。
そののち江戸時代を経て、明治八年(1875)吉水神社と改称、現在にいたる。

吉水神社
吉水神社境内より 吉水神社  拝殿・本殿 吉水神社・屋形門
由緒:天武天皇の白鳳年間に役小角が
創建したと伝わる。
[祭  神]:後醍醐天皇
      楠木正成
       宗信法印
鎮座地:奈良県吉野郡吉野山


吉野の四季/吉水神社の秋  平成16年10月31日掲出       戻る